落ちる 落ちる 深みに 嵌る
ああ、暑い。 もう夏休みも終わろうとしているのに、そんな世間の都合を一蹴するかのように照りつける太陽が、たまらなく憎い。とは言え、クーラーをガンガンに効かせた室内にいれば暑さなんて感じないけど。地球温暖化なんて知るか。 窓から見える夏の無駄にきらきらして見える風景が、あの山本の笑顔のようで、何だか凄くムカついてきた。 「なあ獄寺、宿題終わった?」 「ったりめーだろ」 そう言うと山本はぱぁっと顔を明るくして、次の言葉を繋ごうとする。 「じゃ…」 「ぜってー見せねえからな」 十代目だったら喜んで見せるけど。…っていうかそんなガッカリした顔するな、たかが宿題ごときで。喜怒哀楽の激しい奴め。一頻り項垂れた後、諦めがついたのかまた山本は机に向かう。 すっかり通いなれてしまったこの家で、一応客人だと言うのにかれこれ1時間は放って置かれている。分かってる。別に構って欲しくてここにいる訳じゃない。それに最近は3日に1日はここにいる気がする。 そしてコイツの宿題が終わるのと集中力が切れるのが、どっちの方が先か眺めている。 結局いつも1時間くらいで集中力の方が尽きてしまうのがオチだ。今日ももうそろそろ終わるだろう、とか知らないうちに山本のことを知りすぎていて自己嫌悪に陥る。あまりにも嫌になって少しだけ窓を開けて、ポケットの中に入っている煙草に手を伸ばす。
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急に生ぬるい空気が肌を撫ぜる。とうとう獄寺が煙草に手を伸ばしたんだ。そろそろ1時間が経つ。 おおよそ3日に1日、餌付けをされている野良猫のようにやってくる獄寺は、いつもこうやって1時間くらい俺が勉強をしているのを眺めて、そろそろ1時間が経とうとしている時になると、いつもそうやって煙草に手を伸ばす。そういえば煙草って主流煙より複流煙のほうが有害なんだっけ、俺一応スポーツマンなんだけどな。 獄寺は煙草を取り出すともう窓の外しか見ない。1時間も見られてるんだ、煙草を吸っている短い間くらい見てたってバチは当たらないよな。 煙草を吸っている姿を見ると、自然と指先と唇に目がいく。 俺よりだいぶ細くて白い指、薄くてでも柔らかい唇…ああキスしてぇ… これ以上見てると流石に毒だ。アイスでも買って機嫌をとるか。 「アイス買って来るけど、」 「行かない」 まだ一緒に行こうとか言ってないのに。言おうと思ったけど。 「獄寺何がいい?」 「いちご」 「…」 その顔で苺かよ、なんて絶対言わないけど。(俺的には凄く似合うと思った。) 「じゃあちょっと行って来る」 そう言うとこっちも見ずにひらひらと右手を振る。 そんなつれない姿も可愛いなあ…とか思いながら、やっぱりアイス買いに行くのやめてこのままベッドに飛び込んでしまおうかなんて思いを奥のほうへ押しやった。
アイス食べる獄寺も可愛いなー…なんて今から獄寺のアイスを食べる姿を想像しながらルンルンで帰ったら、当の本人はというと、…寝ていた。本当に生きているのか心配になるくらい静かに、ベッドの上に体を投げ出して、この寒い部屋でタオルケットの一枚も掛けずに倒れていた。 流石に俺も男だ。ここまで無防備な姿を晒されて、悪戯心が芽生えない訳がない。それに、いままでかなり我慢してきたんだ。 ちょっとくらい…な? そう思って、
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唇に柔らかくて暖かいモノが触れた。 煙草を吸い終わったけど、今まで眺めていた対象もいなくなったから何となしに外を眺めていたら、山本がビニール袋を片手に帰ってくるのが見えた。このまま何もせずにここに座っていたら、まるで山本を待っていたみたいだったから、寝たフリを決め込もうと横になった。 その結果がコレだ。 普通に起こされれば、黙って起きてやろうと思ったけど、これじゃ…まるで…俺の方が… 「獄寺、アイス、買ってきたぜ」 素直に顔が上げられない 「…獄寺ー?」
畜生、暑い。