焦がれてしまったあなたを求めて
 「これから暇になるな」、いつも思うことはそれだった。  昨日まであんなにベタベタと雲雀の周りにはりついていた彼が、日本を去り母国へと帰国するため今日の早朝旅立った。彼だって大人だ。そしてひとつのファミリーのボスである。  彼はああやっていつも帰り際に熱いキスを落としてくるけれど、雲雀にとってはたかが1ヶ月。それだけの時間でしかないこれから訪れる予定の彼がいない1ヶ月は、ただ日常が繰り返されるだけであり、しかしどうしたって彼がいるほうが非日常的である。そんなこと彼は気にしてもいないけれど(寧ろ雲雀中心に世界が回っているんじゃないかと思うくらい)。
 とは言ってもやっぱり最初の3日くらいは、彼のことが頭に残る。  それ程彼と過ごす1週間が後を引くものだというのだろうか。  例えば彼がいる間にはいつも来る送り迎えの黒い外車も、たかが1週間だとしても、彼が帰ったあとに歩くアスファルトは酷く久しぶりだと思った。夜ベッドに就く時にだって、そういえばこんなに広いんだっけ、と不思議な感覚に襲われることだってある。  でも、それでも、たかが1週間。そんな感覚に襲われる日だって長く続く訳じゃない。  逆に周りはどうだろう。彼が居る間、下校時間になると学校の脇には必ず黒い外車が停めてあったし、学校内に金髪に鳶色の目をした外人を見掛ける生徒も少なくない筈だった(そうすると雲雀は必ず怒って追い出そうとするけれど)。でもそんな事があったって、それが雲雀に関わっていると知れば誰だって何も言わないし、いつも一緒に居るあの3人組以外はどちらかというと気にしないようにしていた気がする。
 ――ああ、嫌われているんだろうか
 そう思うと自然と口の端から笑みがこぼれた。  そうやって僕と彼を孤立させて行けば、最終的には2人きりになるだろう。そうなってしまえばいいのに。そう思うと何だか心にぽっかりと隙間が出来たようで、ソファに寝そべったまま、何かを掴もうと手を伸ばす。  昨日までだったらその手を掴んでくれる人がいたのに、
 「馬鹿じゃないの、」
 彼のことをこんなに考えたことなんか無くて、ちょっと自分が女々しくて、馬鹿らしい。  はやく1ヶ月が経てばいいのに。
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