※歪アリパロ

「いー兄」

「何?」

僕は振り返る。

「最近冷たくないですか?」

「はぁ?」

何を言い出すんだろうかこの猫は。

「最近女王様がいー兄にばったりだから、なかなかこうやってお茶もできないし」

それは、痛いところをついてくる。

「別に、そんな…」

「いー兄が良くっても、僕が嫌なんです。」

にっこり顔の萌太君。
目が笑っていない。



「もういっそ、女王様のこと、消してしまいましょうか」





この人(猫?)今すごいこと言わなかった?


「消すって…殺すってこと?」
「その通り。」

萌太君が紅茶を啜る。


そうだ、この人本業死神なんだ。


「できるんですよ、一瞬で。」

萌太君は相変わらずにこにこしている。

「人の命なんて、儚く空しいものなんですよ。
 消してしまおうと思えば簡単に絶つことができる。
 他人の命も、自分の命も。
 それに、」

そこでいったん言葉を切り、続けた。

「いー兄のためになら、僕は喜んで命だって投げ捨てます。」


肘をテーブルにのせ指を絡ませ顎を乗せながら嬉々として語る萌太君。
様々な思いが頭を駆け巡る。
僕はエプロンを握った。


「いー兄?」

一瞬でも、怖いと思ってしまった僕は、酷い人間だろうか。

「いー兄?」

呼びかけにハッとすると、彼が立ち上がる。
僕の背中を嫌な汗が流れる。

「萌太君…?」

萌太君の腕がのびる。
僕はなぜが目をぎゅっとつむった。

肩に、温かな重みを感じる。


「怖がらせてごめんなさい。」

「も、えたく…」

「そんな事しませんよ。」

心なしか、腕の力が少し強くなる。

「いー兄の嫌がることは、しません」

頬にキスをおとして体が離れる。


「僕のこと、嫌いになりました?」

萌太君は困ったように微笑む。

「そのくらいで嫌いになったりするわけないだろう。」

言ってから恥ずかしい事を言ったと気づいた僕は、
顔を背けた。

「いー兄、こっち向いてください」

「…何?」

萌太君は幸せそうな顔で言った。


「大好きです。」

「…そ。」

テーブルに目を落とすと、飲みかけの紅茶が目に入った。
僕はカップを手にとると、なるべく時間をかけて飲み干した。






        顔は隠れても真っ赤な耳が見えてますよ、いー兄。




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